LOGINだからってまだ小さな子に、別に実の母親がいるって教えてしまって
いいものかどうか悩ましいよ。一度会わせてもその次は1年後か2年後か、俺たちのっていうか
俺の仕事の都合でいつ日本へ帰れるかわからない状況じゃぁね。陸を苦しめるだけじゃないのかな。
君のことを実の母親だと思って幸せに過ごしている生活にだって、
何らかの波風は立つわけだし。やはり息子が18才になるまでは愛結に会わせるわけにはいかないって、
そう考えてる。 もう母さんとも話し合ってて、そういう方向で進いつの間にか私たちが話しているところに現れた夫が、愛結に言った。「君にそんな当たり前のことを言う資格はないんだよ。友達や恋人に裏切られた希樹と俺の気持ちなんてわかってないだろ」「謝ったじゃない。 それでも許せないならこんな汚い真似しないで結婚できない、親権は渡さないし会わせないって正々堂々言うべきだったんじゃないの?騙すような真似して汚いわよ」 私も彼女に負けてはいなかった。 更に愛結に言いたいことを続けた。「最初に汚い真似したのはどっちよ、まったく。 お礼言ってもらいたいくらい。 子供を引き取らずに済んで、あのあと結婚だってしやすかったはずだし本心では喜んでたんじゃないの? あなた男誑かすの上手いんだからさ。 んで、いい男性《ひと》見付かった? そうでもなさそうね、その様子じゃ。 涼が近くにいれば関係を復活させられたかもしれないけど、お生憎さま。 あいつは遠ぉ~い場所《ところ》で男好きで浮気大好きなぴったりの女と再々婚しちゃってるからねぇ~。 私、とっくの昔にあんたが二輝に振られて結婚してなかったことを、涼にはひとことも言ってなかったの。 あいつ、もしかしたら今でもあんたと二輝が結婚生活続けてると思ってるかもね。 折角離れ離れになってるあんたと涼にくっつかれたりしたら、気持ち悪くてやだもん」 私は、まるであの時から今までのことを復讐するかのように、これまで胸にしまっておいた憎悪をたくさん吐き出した。 私は、愛結に胸の中にしまっていた憎悪を伝えながら、自分は何がしたかっんだろう? と我が身に問うてみた。 ただただ、愛結に過去の大罪を反省して生きてほ
「さてっと、涼のことは今更かもしれないけど、あいつが……あんたの遊び相手が、どんな人間だったのかをぜひとも私は教えてあげたくってたまんないのよっ。 さっきも言ったけどさぁ、涼ったら私と結婚してあっちに行ってからもまた浮気したの。 余所の女に誰彼なしに手を出す、くだらない人間に成り下がっていったわ。 でもね、その時にはあんたと涼が未遂じゃなくて、浮気してた証拠を掴んでいて、離婚することは私の中では決定事項になってたからかな、全然傷つくこともなかったわ。 ヤレヤレまったくぅ~、っていうのが正直な気持ちだったかな。 涼がりっぱな女垂らしになる引き金を引いたのは、愛結、あなただったんじゃないかって私は思ってるの。 浮気を1度経験して、垣根が低くなったのね、きっと。 今言ったようにあなたの次に浮気した青井恵美とも、結局別の女との浮気が原因で別れたみたい。 今はその別の女と暮らしてるみたいだから、その女に涼が飽きたらまた昔のように彼女にしてもらえば? 今度こそ天下晴れて素敵なカップルになれそうじゃない?」 私の素敵な提案を聞いた愛結は、唇を噛み締め、キッと私をねめつけてきた。 「やめてくれる? 私を恨むのはお門違いなのよ。 責めるなら昔の自分自身にだよ、愛結。 友達の夫を寝盗るなんてことする奴に明るい未来なんてあるわけないでしょうに。 それをちゃんと自分にわからせないと、この先ずっと、幸せになんてなれないんだよ? 愛結《あ~ゆ》。 あんたと涼の未遂事件のあと、まだ涼のことを想い結婚生活に夢を持っていた私は、あなたや涼を許してやり直そう、再出発して幸せになりたいってそう思ってた。 だけどなかなか忘れられなかった。 記憶喪失にでもならな
「そっ、そんなこと私がするわけないでしょ。 なに言ってんのよ。 自分のお腹を痛めて産んだ子にもずっと会えなくて、私がどんなにみじめで寂しい生活をしてきたか、あなたになんかにわかるはずないっ! 酷い人ね、あなた。 私から息子を奪って、その上勝手に育てていたなんて酷過ぎる。 ちょっとした出来心だったのよ、涼とのことは。 二輝のことは愛してた……好きだった。 結婚だって考えてた。 あなたから涼を奪おうだなんて微塵も考えてなかったのに。 それなのにあなたが大騒ぎして二輝を唆《そそのか》して、私と息子の人生をめちゃくちゃにしたのよ。 許さない、絶対許さないから。 息子を今からでもあなたから取り返すわ、見てなさい」 ◇ ◇ ◇ ◇ 愛結を痛めつけるつもりで吐いた私の言葉に、愛結がすごく反応してきた。 ぶっちゃけ遠い異国にいて愛結の生活のことなど何一つ知る術のない自分だけど、あまりの反応振りを垣間見て──後日愛結のあれからの様子を調べてみようかなぁなんて頭の隅で考えながら、今までの言い足りない言葉を私は頭をフル回転させながら探した。「愛結《あ~ゆ》そんなにかっかしないで。 図星だったのかなぁ? ははっ。 まぁ落ち着いて。 まだまだあなたには知らせたいことが山ほどあるんだからさ。 今日話しておかないと、次はいつこんなに話せる機会があるかわからないと思うから、聞いてほしいなぁ。 ねねっ、涼があれからどうなったか、知りたくなぁ~い? あなたのお遊びの相手のことよ~」「しっ、知りたいなんて思うわけないでしょ。 あれから何年経ってると思ってるの。 今の今まで希樹と涼がとっくに離婚してたことだって知らなかったんだから。 聞いてもしようがないじゃん。今更」「うん、そうかもね。今更かぁ~ふふっ。 今更だから話せることもあるのよぉ。 私、絶対涼と離婚したこと、愛結にだけは知られたくなかったからねぇ~。 何故かと言・う・と、愛結が涼に連絡取ったりしないように……かな。 愛結にはずーっとひとりで孤独を味わっていてほしかったからね。 ふふっ」「ひっ、酷い人」 私の言葉に、愛結の顔が歪む。「そうそう、さっき聞き捨てならないこと言ってたけども、私が大騒ぎして二輝を誑《たぶら》かしたとか何とかって……。 その
私、涼のご両親にだけはちゃんと涼とあなたとの前科があった件を話しておいて、スムーズに離婚できるよう根回ししたの。 誰を味方につけるか、よくよく考えてね。 涼のご両親に、涼の浮気が二度目であることをお話しして了解いただけたあと、一度も涼に会うことなく私たちの離婚が成立したわ。 女から妊娠してるいると言われていたご両親も、私が離婚を望んでいることを知り、内心安堵したことでしょうね。 だって、愛人がいて、その愛人に涼との子供ができたっていう体じゃなくて、その女と涼が結婚すれば、ちゃんと正妻との子供っていうことにできるもの。 きっと、何も知らなかった涼だけが、私の出した結論に心底驚いたでしょうね。 女は狂喜乱舞して喜んだんじゃないかしら。 浮気相手の女がどうしても、何としてでも涼が欲しいって言うから、ちゃんとお望み通りに熨斗付けて進呈してあげたのよ? 笑えるでしょ? 本当はそこって正妻が怒り泣き叫ぶシーンだったかもしれないくらいのモノなのに、あっさり進呈って。ふふっ。 女はね、涼の後ろについてるもの《実家の資産》にもすごく興味を持ってたの。 涼には優秀なお兄さんがいて、実家を継ぐことになっていたのにね。 まぁ、それでも涼が普通にしていれば次男だけどそれなりの相続はできたんじゃないかと思ってるけど……。 でも、あなたとのこと含めて二度の浮気に、私との離婚でしょ。 真面目なご両親たちは大層ご立腹だったから、どうなのかな? なんて思っていたら。 結局女と再婚したあとで、涼は実家から勘当されたのよ。 ふふっ、知らなかったでしょ? 私の後釜に入った女も、どうだろう。 あれから苦労してるんじゃないかしらね。 何せ涼は女性にだらしないから。 ところで愛結《あ~ゆ》、あなたはどうだったの? また余所の既婚男性誑かしてたんじゃないでしょうね?」
それとね、もうひとつ予想外のことが起きた。 息子の陸のこと。 私は二輝のことを深く愛するようになり、そして陸との暮らしの中でいつの間にか陸のことも、気がついたら深く愛するようになってたの。 あなたの子でもある陸を、こんなにも愛することができる日がこようとは、ほんとに予想外だったわ。 私ね愛結、家に強盗が押し入って来て陸を刃物で刺そうとしたら代わりに死ねる。 うんっ、陸のためなら死ねる」「何勝手なこと言ってんの? 私の息子を奪っておいて酷い人。 悪魔……鬼ぃ……鬼畜。 あなたなんて……希樹なんて……私の友達じゃあないよ、人でなし」「その言葉、あなたに全部返すわぁ~。 最初に私や二輝に酷い仕打ちをしたのはあなたじゃないの、愛結。 あなたにだけはそんなこと言われる筋合いはないはずよ。 この際だから、あの頃言えなかったことをっていうか──今だから言えることもあるか。 まっどっちでもいいや。 はっきり言っとく。 二輝が、どんなにキズついたか知らないでしょ。 私たちが結婚してたことで、少しはつらさをわかってもらえたらとしたら、本望だわ。 当て付けのような結婚に見えるかもしれないけど、私は心から二輝を愛してる。 彼は良い人だよ。 二輝ほど誠実で妻や子供を大切にする男性はいないわ。 そう思えるほどこの10数年間、私も子供たちも大切にしてもらってきたわ。 涼とは正反対。 あなたもあんな不誠実な男と遊びで浮気したのが、運のツキだったのよ。 あいつね、私と結婚してからも別の女と浮気してたの。 なのにバレたあと、私とは離婚したくないってごねたの。 あきれるわぁ~。 その時の涼は、愛結との間の浮気は未遂のままだったと、まだ私が鵜呑みにしていると思ってたんだろうけど。 私もあんたとの浮気を知っていることは、結局その時もそれ以降も涼には言ってないんだけどね。 だからね、別の女との浮気を『初めての浮気だから見逃してほしい、心を入れ替えるから許してほしい』って彼、私に言ったの。 頭おかしいし、馬鹿にしてるわよね、私のことを。 まぁ、涼はそんな調子だったんだけど、相手の女の突撃が、すごかったのよぉ~。 とにかく、子供ができたから私に涼と別れてくれってうるさいのなんのって。 涼は逃げまくってたけど。 とう
「どう? 友達に自分の彼を盗られた気持ち、少しはわかった? まぁ、私は別に寝盗ったりはしてないけどさ。 お互いシングル同士でちゃんと結婚前提のお付き合いをして、 真っ当な手順を踏んで結婚したのだし。 あなたの元彼ではあるけど。 あんたはれっきとした私の婚約者と浮気したんだものね。 そんなあんたにとやかく文句つけられる筋合いはないと思うけど。 ゲスなことしたあんたなんかに。 私、あなたと涼の浮気を知ってあんたたち2人を呪ったわ。 そして絶対あなたと涼に復讐してやるって誓った。 そこで復讐の手始めとして二輝に陸の親権を取れるようレクチャーしたの あ・た・し・が。 小さい子はダントツ無条件に母親に親権がいっちゃうの。 愛結、知らなかったでしょ? だから、簡単だったわぁ~。 上手くあなたを言い含めて働きに行かせ、その間二輝は実家の両親や妹さんに 手伝ってもらいながら、乳児でもちゃんと育ててるっていう実績を作ったの。 重ねて言うけどこれ提案したの私。あははっ! それでね、あの時二輝に提案したことがもう1つあったのよ。 愛結をぎゃふんって言わせるために、私たち結婚しない? って。 そもそも私って自分に自信がなくてチキンだから、怒りからの勢いで二輝に そんな提案したけれど──そうは言いつつも腰は引けてたし、そもそも二輝がそんな復讐のために 私と結婚するなんて思ってもなくて。 モノの弾みの言葉として、言葉だけで私の提案は終わると思ってたし。 二輝も私の提案が、ただの復讐心からのものってわかってたはず。 だけどね、二輝はやさしい人なんだ。 復讐のことはさて置き、私とのことは真剣に考えたいって言ってくれたの。 誠実な二輝の申し出は、涼やあんたに散々人間不信に陥らされていた私には 一筋のオアシスだった。 誠







